第 5 章
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清く正しい本棚の「塗装編」
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ver 1.00 (2003.1.29)
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清く正しい本棚の作り方も、いよいよ第5章「塗装編」までやって来た。塗装工程は 慣れないうちは大変な工程のように思われるが、やってみると案外楽しい作業である。 ■ おおまかな作業手順 実は、塗装工程には「これが絶対に正解」という手順は無い(と私は思う)。もちろん ある程度のセオリーはあるが、塗るモノと塗ったあとの美しさのレベルにおいて、要求 される品質が千差万別だからである。例えば犬小屋の屋根を塗るのとスピーカーを塗る のとでは、出来上がりの期待が全然違ってくることに異論はないだろう。ここでは特に 自作本棚に限定し、ごく平均的だと思われる作業手順について説明してみたい。 まず最初に「下地処理」を行なう。ランバーコア材の穴やすき間を木工パテで埋めて そのあと全体を紙ヤスリで磨き上げる。美しい塗装面の仕上がりを得るためには、この 下地処理は避けて通れぬ工程だ。材料自体の穴やすき間は、ペンキだけでは絶対カバー 出来ないからである。この辺の事情は、女性の「化粧」以前の「土台作り」にも通ずる ところがあるのではないかしらん?と愚考する次第(^_^)。 下地処理が終わったら「ペンキ塗り」を行なう。まず下塗りを行ない、次に上塗りを 何度か繰り返す。ここでは最初からペンキを濃く塗るのではなく、薄いペンキを何度も 塗り重ねていくようにするのがコツだろう。慣れないうちは(慣れない人ほど!)、この ペンキを一番最初から濃く塗ってしまう傾向にあるが、これは間違いだ。ペンキを塗る ということは材料の表面に「塗膜」を作るということであり、この塗膜は薄ければ薄い ほど、自然に働く「表面張力」の作用で均一かつ美しく仕上がるものだからである。 本棚の場合 塗膜を作るペンキ塗りは最低でも2回、余力があるなら(あるいは目立つ 部分だけは特別に)、3回〜4回程度を 塗り重ねれば良いと思う。最終的にはアナタが 納得する仕上がりに持っていくべきだろうが、この回数でも本棚の棚板に本の背表紙が ぼんやり映り込むくらいの仕上がりレベルにはなる。 ペンキ塗りが終わったら最後の「仕上げ」に入る。耐水ペーパーで水研ぎと呼ばれる 作業を行なったのち、最終的な仕上げ塗りを行なえば塗装作業は完了だ。最後にこれは 塗装ではないが、本棚の「裏板」を貼り付けて目出度く清く正しい本棚の完成となる。 ■ 塗装工程で必要な道具 塗装工程で必要な道具について書いておく。ペンキはすでに第3章で買ってあるので 残る買い物は「ハケ・紙ヤスリ・耐水ペーパー」だけである。 売り場に行けば色々な種類があるが、ハケは幅4〜5センチの平らなヤツが、本棚の 塗装には適していると思う。最初は1本あれば十分で、値段も700円くらいのヤツで 構わない。高くても1200円くらいまでにしておこう。安物のハケは毛が抜けやすい のでプロは見向きもしないそうだが、我々の工作にはこれで十分である。ハケを買って きたら、まず毛先を何度も紙ヤスリにこすりつけて、あらかじめ抜けやすい毛を抜いて おくのが宜しかろう。こうすれば、塗装中の毛抜けをかなり防ぐことが出来るそうだ。 紙ヤスリにも色々な種類がある。どの商品も必ず裏側に番号が印刷してあって、その 番号で「目」の違いが判るようになっている。すなわちこの番号が小さいモノほど目は 粗くなり、逆に番号が大きいモノほど目は細かくなる。本棚の塗装では「120番」と 呼ばれる比較的目の粗い紙ヤスリでパテを削り取り、そのあと目の細かい「240番」 あたりに切り替えて磨くことが多いだろう。 さらに「水研ぎ」と呼ばれる工程では、紙ヤスリの親戚(?) 耐水ペーパーと呼ばれる 非常に目の細かいペーパーを使う。耐水ペーパーとは文字通り、耐水性のある紙ヤスリ のことであり、塗膜を水で濡らして磨き上げる時に使うモノである。目の細かさで言う なら、その目はだいたい「1800番」あたりが使いやすい。紙ヤスリと同じ売り場で 入手可能だが、こちらは色が黒っぽいのですぐに判るはずである。 さてこれらの紙ヤスリ(含む耐水ペーパー)は、どれもがだいたいA4サイズくらいで 小売りされている。本章の内容にしたがって自作本棚2本を塗装する場合には、 120番 (紙ヤスリ) : 4枚〜5枚 240番 (紙ヤスリ) : 10枚程度 1800番 (耐水ペーパー) : 2枚〜3枚 くらいの枚数を買い込んでおけば十分だと思う。塗装工程に必要な買い物は、これらが すべてである。2千円札が1枚あれば、必ずお釣りが来るはずだ。 最後に、これは買い物ではないのだが、塗装作業の途中でペンキを入れる容器を準備 しておきたい。片手で持てる底が深めの容器なら何でも良く、小さなバケツやお菓子の 空き缶などが利用出来るだろう。独身者諸君は、お菓子の空き缶など持ち合わせが無い かも知れないが、私自身は大昔から洗面器を使ってきた経緯がある。うるさい奥さんが いないなら(^_^;)、洗面器は非常に使いやすい塗装容器だと申し上げておきたい。 ■ 作業場所の確保 本棚に塗装を行なう場合に問題となるのは、道具よりもむしろ「作業場所の確保」の 方だろうと思う。私はここ10年来、自宅前の道路を作業場としているが、アパートや マンションなどにお住まいの方々には、この作業場所の確保が難しいかも知れない。 ズバリ、水性ペンキを塗るだけであれば、その作業は6畳程度の室内でも十分可能で ある。私自身、独身寮や社宅などに住んでいた頃には室内でペンキを塗っていた。水性 ペンキには気になる匂いがまったく無く(超微臭と書いてある)、ハケなどの後片付けが 水洗いだけで終わるのも大変有り難い。 しかしながら冒頭で述べた下地処理、すなわち「パテ盛り」と「ヤスリがけ」の作業 だけは、無理をしてでも屋外で行なうことをお勧めする。アパートやマンションなどの 場合には、各ご家庭のベランダなどが利用出来るだろう。大変かも知れないが、私自身 にも経験があることだから、どうか皆さんも工夫して頑張って頂きたい。 (例えば)1戸建てのご家庭で、道路に面したガレージがあって、そのガレージに屋根 までついているなら、これはもう、本棚の塗装には「最高の環境」である。その最高の 環境を所有する幸せを噛みしめながら、さぁ、アナタも塗装工程にチャレンジだっ! |
■ 木工パテを盛る 下地処理の最初の作業は、材料の穴やすき間に木工パテを盛り込む「パテ盛り」作業 である。我々の清く正しい本棚は美しいランバーコア材で出来ているが、それでも側板 には木ネジを締め上げた穴が並んでいるし、材料自体の切り口にも小さな穴やすき間が あるものだ。これらの穴やすき間のひとつひとつを、丹念に木工パテで埋めていこう。 木工パテには、プラ製のヘラが付属している。実はこのヘラは、やってみれば判るが ほとんど使い物にならないので注意が必要だ。木工パテは思ったより粘度が高く、ヘラ では上手く盛り込めない。チューブから絞ったパテは覚悟して指先に取り、それを穴や すき間に「盛り上げる」よう塗り込んでいくのがコツである。これは、溶剤の性質から パテは乾くと必ず「肉痩せ」してしまうからである。ツライチに盛ると、乾いたパテは 必ず凹んでしまうものと心得るべし。 |
ランバーコア材の すき間
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パテを 盛り込んだところ
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側板の木ネジ穴も埋める
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上の写真が、木工パテを盛り込んだ例である。パテが完全に硬化するまで、このまま 最低でも一昼夜は放置する。パテは乾燥時にひどい臭気を発するので、出来れば屋外に 放置することをお勧めしておきたい。 ■ 木工パテをツライチに削る 木工パテが完全に硬化したら、いよいよ「ヤスリがけ」作業を開始する。紙ヤスリは 下の写真(左)のように、必ず木片などに巻きつけて使うこと。建具屋に切ってもらった 材料のうち、ハカマ材の余り部分が有効活用出来るはずである。木工パテを削る時には 紙ヤスリの目はちょっと粗めの「120番」あたりが使いやすいだろう。 |
木片に巻きつけた 紙ヤスリ
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側板の 木ネジの穴部分
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紙ヤスリで 削ったところ
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削る部分に紙ヤスリをあてがい、材料に力が均一にかかるよう注意しながら気合いを 込めて削る。硬化した木工パテがみるみるうちにホコリとなって飛び散り、穴やすき間 部分がツライチになるはずだ。実に気持ちが良い。この時の快感は、ちょっと言葉では 説明出来ないほどである。まるで自分が「飛騨の職人さん(か、何か)」になったような 気分……だと言えば、アナタにもこの嬉しさが理解して頂けるだろうか?(^_^) |
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紙ヤスリをかける前の状態
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削ったあとは 見事にツライチ!
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しかし、こうして木工パテを削っていくと、場所によっては材料とパテがツライチに ならない部分が出てくることがある。不幸にしてパテ盛りが足りなかったか、あるいは パテが乾燥時の収縮に伴ってヒビ割れを起こしたような部分である。当然ながら、この ような部分にはもう一度パテを盛る。乾燥にも再び一昼夜を要するから、もしアナタが 今度の週末に本棚を塗装したいのなら、パテ盛り(とパテ削り)はウィークデーのうちに 少しづつ進め、作業を完了しておくのが良いだろう。 ■ 材料の「面」を取る 木工パテを削ったら、今度は本棚の各部の「面」を取る。「面」とは材料の角の部分 のことであり、下の写真のように、紙ヤスリを巻きつけた木片を材料の角に対してほぼ 45度に傾けて削るのである。この「45度」という角度には、あんまり神経質になる 必要はない。要は、材料の角が「ささくれ」など起こさぬよう、まんべんなく滑らかに なれば良いだけのお話である。 |
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面取りの様子 (材料の角を削る)
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面取り時の注意点は、削り方よりも「削り忘れを残さない」ことである。と言うのも 材料の角の部分とは、すなわち すべての合板の「辺」を意味しており、(冷静になって 考えてみれば判るが) 想像以上に「多い」からである。1枚の棚板でも上部と下部とで 2辺、これが前面と背面なら4辺、そんな棚板が10段あるから40辺、さらに側板は 左右2枚あるし、いや待て、上段と下段で……てな感じでその長さを勘定していったら 本当にキリがない(^_^;)。面取りは、是非とも落ち着いて「端から順番に」削るように お勧めする次第である。 ■ 清く正しいヤスリがけ 面取りが終わったら、紙ヤスリの目を「240番」あたりの細かいヤツに取り替えて 今度は本棚全体を磨いていく。すごいホコリが飛び散り、顔まで真っ白になってしまう だろうが、ここは是非とも頑張って磨いてほしい。特に本棚前面の「木口」部分は重要 である。材料を指先で撫でてみて、自分が納得する手触りが得られれば合格だ。 |
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磨くべし、磨くべし、磨くべし……
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この「ヤスリがけ」作業は、清く正しい本棚作りの全工程の中でも非常にキツい工程 である。ひとつだけアドバイスしておくと、決して短気を起こしてはいけない。焦りは 禁物である。ゴシゴシゴシゴシ……、ただひたすらに、一定の調子で磨き続けることが 肝要だ。今磨いている本棚がやがては自分の書斎に悠然と収まって、大好きな本たちを 蓄えて10年20年30年の時間が流れて、やがて自分が死ぬまでの一生、清く正しい 本棚として活躍してくれるであろう姿を想像しつつ、ひたむきに磨くのである(^_^)。 |
■ いよいよ下塗り! 下地処理が終わったら、いよいよ待望の「ペンキ塗り」である。ペンキ塗りは冒頭で 述べた通り、薄く溶いたペンキを何度も何度も塗り重ねていくようにする。お店で購入 した水性ペンキの缶に「このペンキは1度塗りして下さい」と書いてあっても、我々は 絶対にペンキを水で薄めて塗り重ねるべきである! 天候的なことを書いておくと、もちろん塗装作業は晴れた日にやる方が良い。しかし ここで必要なのはカンカン照りの太陽ではなく、むしろ「乾燥した空気」なのである。 塗装中の空気に湿り気があると、塗装した塗膜が白く曇る、いわゆる「カブリ」という 現象が発生してしまう。これを防ぐためには、多少曇っていても構わないから、空気が 乾燥している日を選んで塗装する必要があるだろう。季節を限定するほどの必要はない と思うが、天気予報の「お洗濯指数」など身の回りの情報をご参考にして、清く正しい ペンキ塗りに最適な日を選んで頂きたい。 ■ ペンキ塗りの極意 水性ペンキの缶からトロッと適量を塗装容器に流し込み、そこにきれいな水を入れて 良くかき混ぜる。だいたい2〜3倍程度に薄めれば良いだろう。ペンキをハケに含ませ 恐る恐る塗り始めるわけだが、その前にちょっとしたセオリーを述べておく。 (1) 目立たない部分から、先に塗っていく (→ 最初は本棚を逆さまに立てておく)。 (2) 塗りたい面を、出来るだけ平らにする (→ 塗りながら、次々とひっくり返す)。 (3) 一度塗ったところは、あまり弄らない (→ ムラや毛抜けなどは気にしない!)。 実際の作業風景をお見せしよう。下の写真で一番左側が、これから塗装する本棚だ。 ハカマ部分を上にして、ちょうど逆さまに立ててある点にご注目。下の方に見えるのは 公共の道路をペンキで汚さぬための「添え材」で、これはもちろん合板の余り材だ。 |
逆さまに立てた本棚
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前面の木口から塗る
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次に 棚板の裏を塗る
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ここでちょっと 乾かす
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最初にハカマや木口部分を塗り、次に棚板を上から順に1枚づつ塗っていく。全体を ひっくり返してあるから、棚板は裏側から先に塗っていることになる。下塗り段階では 塗りムラはまったく気にする必要はない。どんどんシャカシャカ、手早く塗り進めれば 良いだろう。ペンキにはもともと「表面張力」が働くから、塗ったあとを未練たらしく 弄るのは、かえって宜しくないのである。ハケの毛が抜けても気にしないこと。これは 乾いたあと紙ヤスリで磨けば、たちまち消えてなくなるモノである。 |
本棚をひっくり返す
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天板も 忘れず塗る!
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最後に 側板を塗る
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これで 下塗り完了!
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こうして(おもに)棚板の裏側部分を塗り終えたら、ちょっと乾かしたあと本棚全体を ひっくり返して正規の位置にする。今度は棚板の表側部分を塗ることになるが、これも 上から順番に塗っていこう。写真では、左右の側板を塗る時に本棚を立てたまま塗って いるが、「塗りたい面を出来るだけ平らに」というセオリーに従うのであれば、横着を せず、ここでも本棚を横に寝かせてから 塗るべきである(私の作例は、たまたま自宅の 新築に伴い、過去に製作した既存本棚の「すき間に押し込む」予定だったため、本棚の 設置後は側板が見えなくなることから作業を簡略化したものである)。 ■ 裏板を塗る 本体の下塗りが終わったら、乾燥を待つ時間を利用し裏板も塗ってしまおう。裏板は ベニヤ板の全体に紙ヤスリをかけて、切り口の面も取っておく。ここは特にささくれが 出やすいところだから、入念に面を取るべきである。良くホコリを取り除き、全体的に ササッとペンキを塗っていく。裏板は、本棚完成後に本を入れるとほとんど目立たなく なる部分だから、仕上がりに関して神経質になる必要はない。むしろ、完成後に目立つ のは、切り口部分の「塗り残し」の方だろう。ここにベニヤ板の地色など残っちゃうと 大変カッコ悪いので(^_^;)、ハケの側面を使って塗り残しがないように心掛けたい。 |
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塗装した ベニヤの裏板
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■ 上塗りを(何度か)繰り返す 水性ペンキは意外と乾燥が早い。缶には「水性反応硬化型ウレタン」とある。全体を 塗り終わる頃には最初に塗った部分が乾いているが、引き続き最低でも2時間くらいは 乾燥時間を取るべきだろう。 下塗りが乾くと、本棚の全体が毛羽立ってくるはずだ。完全に乾いていることを確認 したのち、240番の紙ヤスリで表面を軽く削って、毛羽立ちを落ち着かせる。抜けた ハケ毛が引っ付いていれば、これも一緒に紙ヤスリで削り取ってしまおう。 雑巾で汚れを拭き取り、再び薄く溶いたペンキをハケ塗りしていく。これが上塗りで ある。上塗りは、下塗り時に述べたセオリーを遵守しながらも、ハケを塗装面に対して 垂直に近く立てるようにして、ハケ目を全体に伸ばしていくような感じで塗ると良い。 かなり時間がかかるが、ここでも焦りは禁物だ。とにかく、一度に濃く塗ろうとはせず 塗っては乾かし、乾いたら毛羽立ちを紙ヤスリで磨き、磨いたらまた薄く塗る……、と いう作業を(何度か)繰り返していくのである。 |
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最初の下塗り 直後の様子
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何度か 上塗りを繰り返した様子
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上の写真の2枚を比べて見て欲しい。部位は違うが、写真(左)が最初の下塗り直後の 様子であり、写真(右)が上塗りを繰り返したあとの様子である。最初は塗りムラが大変 目立つが、上塗りを繰り返すうちに比較的まともな塗膜に仕上がるのが判るだろう。 本棚とはあくまでも本を収納する「実用品」であるから、全体をピアノみたいな鏡面 仕上げにする必要はない。上塗りを繰り返すのも、比較的目立つ表側部分だけで良いと 思う。上塗りは1回〜2回、余力があれば3回くらいの繰り返しを目安にしておこう。 |
下塗りと上塗りが終わったら、最後の「仕上げ」に入る。ここでは「1800番」の 耐水ペーパーで「水研ぎ」と呼ばれる作業を行ない、そのあと「仕上げ塗り」をする。 この工程で、我々の本棚の表面は非常に美しい仕上がりになるはずだ。 ■ 水研ぎのやり方 水研ぎとは、水で濡らした耐水ペーパーを使って、塗膜表面を磨く作業である。 棚板1枚ごとに、片手で水を2〜3杯すくいジャブジャブかける。かなり思い切って かけて良い。水をかけたら、木片に巻きつけた耐水ペーパーをそっとあてがい、棚板の 長手方向に沿って表面を優しく撫でる。決して、力を入れる必要はない。力を入れると 塗膜を無用に傷つけてしまう。むしろ木片は心持ち上に持ち上げるようにすると、耐水 ペーパーだけが棚板表面にピッタリ吸い付く感じになるから、この状態で木片を左右に 動かせば良いだろう。私はいつも、こんなフィーリングでやっている。 |
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水研ぎの様子
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水研ぎを行なうと、最初は耐水ペーパーに引っ掛かるような感じがあるが、ある瞬間 から俄然動きが滑らかになるはずだ。ヌルヌルとした「研ぎカス」みたいなものが出て くるが、構わず全体に耐水ペーパーをかけていくと、塗装面にしっとりとした滑らかな 手触りが広がっていくはずである。 全体の水研ぎが終わったら、丁寧に「研ぎカス」を雑巾で拭き取っていく。この拭き 取り作業を行なうと一時的に塗装面が真っ白に曇って驚くが、これはまったく心配する 必要はない。あとで述べる「仕上げ塗り」を行なうことで、しっとりした手触りはその ままで、美しい塗装面が蘇ってきてくれる。 ■ 仕上げ塗り 最後の「仕上げ塗り」では、もうハケは使わない。薄〜く薄く溶いたペンキを雑巾に 含ませて、材料の塗面を「濡らす」ように塗っていくのだ。 |
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仕上げ塗り用ペンキは この薄さ
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塗面を濡らすように 塗っていく
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仕上げ塗り用のペンキは、本当に薄くて構わない。上の写真(左)のように、新聞紙に 塗れば文字が透けて見えるくらいまで薄めよう。雑巾をそっとあてがって、小さな円を 描くように塗っていく。これは「塗ってる先から乾くような感じ」とでも言おうか? こうして、美しい塗装面が広がっていくと、これまでの苦労が報われたような気分で 実に感慨深いことだろう。我々の清く正しい本棚も、いよいよ完成間近である。 |
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塗装完了した本棚 (2本)
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■ 裏板の貼り付け 塗装が終わった清く正しい本棚に、最後の最後で裏板を貼り付ける。当然ながらこの 作業は、塗装が完全に乾いたのち本棚を室内に持ち込んで行なうこととなる。 本棚を俯せに寝かせて、裏板をかぶせてみる。シャープペンシルで棚板の位置を描き 込んだら、ここでも真面目にケガキを行なう。いったん裏板を外し、木工ボンドを棚板 すべてに少量塗ったのち、出来れば2人かがりで裏板をそっとかぶせる。1人が裏板と 本棚が接する一辺の位置決めを行なって、あとの1人がその一辺を軸にして裏板を回転 させるように載せれば良いだろう。裏板は、ピタリと本棚背面に載るはずである。 |
裏板をあてがい、ケガキする
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木工ボンドを 少量塗って
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金づちで 釘止めしていく
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ケガキ線に沿って、裏板を釘で止めていく。棚板1枚あたり、4本程度の釘を打てば 十分である。裏板は本棚の全体強度のうちでも特に「引っ張り方向」に効くから、釘と 木工ボンドで「たるみ」が生じないように貼り付けていく。釘を打ち込んだら、最後に 本棚をひっくり返して、ハミ出た木工ボンドを拭き取るのも当然の後始末である。 以上で、清く正しい本棚の「塗装編」は終了である。塗装の終わった本棚を、静かに 書斎に運び入れようではないか。 ■ 清く正しい本棚、堂々の完成だっ! おめでとう! ついに、アナタの清く正しい本棚は完成した! 一人で静かに感慨に ふけるも良し、家族やお友達に自慢するのも良いだろう。アナタには、十分その資格が あるはずだ。もう一度言う。本当に、おめでとう!(^_^) 次章は、清く正しい本棚の「設置編」と題して、書斎に運び入れたあとの耐震工事や 本棚配置方法のバリエーションについて述べる予定だ。 引き続き、乞うご期待(^_^)。 |